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概要

 我々の住む太陽系は、数億個の星の集団である銀河系の中に位置しています。宇宙が誕生してから約138億年、宇宙では星の誕生、爆発が何度も繰り返されてきました。我々の住む銀河系では、現在も、数多くの恒星が誕生しています。そのような恒星の誕生メカニズムを理解する事が本研究室の大きな目的です。特にまだ良くわかっていない”大質量星”と呼ばれる恒星の形成過程を明らかにしようとしています。既存の観測装置で観測するだけではなく、自ら開発した装置での観測も行っています。

電波観測による星形成過程の解明

 恒星は、分子雲と呼ばれる希薄なガス雲が重力収縮することによって誕生します。星が生まれている現場は、非常に低温(約-260度)のため、可視光では見えません。そのような低温領域では”電波”が強く放射されます。したがって、”電波”を観測する事で、分子雲内部で恒星が誕生する様子を知る事ができます。本研究室では、国内外の様々な電波望遠鏡を使い、恒星誕生のメカニズムに迫ります。

大質量星

 太陽の8倍以上の質量を持つ恒星を"大質量星"と呼びます。大質量星は、太陽の様な比較的小さな恒星と違い、一生の最後に大爆発(超新星爆発)を起こします。この爆発によって撒き散らされた物質は、次の世代の星の材料になります。さらに、爆発によって様々な元素が合成されます。宇宙が誕生時には水素やヘリウムが主だった元素組成が、現在のような組成になったのは、大質量星の形成、爆発が繰り返されて来たためです。我々を構成している元素も大質量星の超新星爆発の結果生成されたものと言えます。したがって、大質量星の形成過程を理解する事は、我々がどのように生まれて来たのかという問いにも直結する重要な研究テーマの一つです。
 しかし、大質量星がどのように形成されるのか、まだあまりよくわかっていません。本研究室では、特に大質量星の形成前、あるいは形成初期にある天体のスペクトル線観測によって、大質量星の形成過程を解明しようとしています。

スペクトル線観測による星形成過程の解明

 分子雲には、様々な分子が存在していることが知られていますそれら分子の出すスペクトル線は、”電波”で観測することができます(下図:スペクトル線観測の例)。スペクトル線の強度を調べる事で、分子雲にどのような分子がどれくらい存在しているか調べる事ができます。
 分子雲の組成は、常に一定ではありません。分子雲が形成されてから、時間とともに徐々に変化していきます。分子雲内部の化学反応は、分子あるいは原子同士が衝突することによって起こります。地球大気よりも遥かに希薄な分子雲では、衝突の頻度が低いため、分子雲の組成は非常にゆっくりと変化していきます。そのため、分子雲形成初期と後期では、組成が大きく異なります。したがって、分子雲の化学組成を調べる事で、分子雲が形成されてからどのくらいの時間が経過しているのか知る事ができます。
 天体の進化を知る上で、その天体の進化段階を知る事は極めて重要です。天体の進化は100万年など非常に長いタイムスケールの現象であるため、一つの天体を観測してその進化を知る事はできません。天体の進化を理解するためには、進化段階の異なる天体を観測しそれらを比較することが必要です。本研究室では、分子雲の化学組成から進化段階を判定し、それぞれの物理状態を比較する事で、分子雲内部で恒星が誕生する様子を調べています。

電波天文用受信機の開発

 天体観測を効率よく進めるためには、受信機の性能向上が必要不可欠です。本研究室では、南米チリに設置されたアルマ望遠鏡とメキシコに設置されたLarge Millimeter Telescope用の受信機開発を行なっています。ミリ波サブミリ波帯の電波観測には、超伝導トンネル接合を用いたSIS素子が用いられます。本研究室では、SIS素子の設計を行い、国立天文台などと共同で受信素子の製作を行っています。実験室に、テスト用の冷却デュワーがあり、製作した受信素子の性能評価を行うことができます。また、受信素子だけでなく、導波管回路の設計、製作なども行っています。

大型ミリ波サブミリ波干渉計アルマ

 南米チリ標高5000mのアタカマ高地に建設された大型電波望遠鏡”アルマ”は、合計66台のアンテナを組み合わせて使用する干渉計型の望遠鏡です。アルマ望遠鏡の性能は、これまでの観測装置の性能を凌駕し、アルマ望遠鏡を用いた観測によって、これまでに人類が見た事のない世界を見る事ができます。本研究室では、アルマ望遠鏡を用いた観測も行っています。今後も、アルマ望遠鏡を使用した観測によって、新たな発見が期待できます。